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ぼんやりと、目が覚めてきた。
どうやら日付が変わったようで、朝日が目に刺さる。変わらぬ風景に変わらぬ鳥のさえずり。任務中というのにこんなにも安らいでいいのかと、スャムが自分に呆れたその時。
もたれていた木の後ろでがさりと音がした。
一気に目が冴え、腰から短刀を引き抜き、構える。
「誰だ」
短く問えば、ゆっくりと木の後ろから、音の正体が姿を現した。
「待て待て! 別に怪しいもんやあらへん! 」
騒々しい声に、スャムは眉をひそめた。
「五月蝿ぇ。どこの手の者だ」
短刀を首に押し付けて迫ると、男の綺麗な空色の目に、怯えの色が走った。
「いやぁ…どこの手の者って言われてもやな…えっと、別にあんたに何かするつもりやないんやけど、見かけたから…その」
しどろもどろに答える男を眺めて、スャムは武人ではないな、と判断した。
「その訛りは真焔帝国か。使節か何かか?」
武装を解いて、言ってしまってから後悔した。
(使節なら正式に入国できるだろうが、馬鹿野郎。なめられたらどうする)
案の定、男は少し素を出した。
「あっはっはっ! お前何いうとんのん! 使節やったら正式に入れるやん! こんなとこおらへんやん!」
短刀を下されたからか、突然態度が大きくなる。嬉しそうにひっひっひっと引き笑いをする男。スャムは露骨に嫌そうな顔をした。
「だったらなんだ。殺すぞ」
とうとうめんどくさくなり、スャムは殺気をたぎらせた。
武術の腕一本で上り詰めた地位ゆえに、実はそんなに頭は良くないのだ。そんなスャムの少し短絡的な性格を察してか、男はその場に腰を下ろした。
「まあ待てまあ待て。説明するやん? 聞けや」
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