一章【文武両道は天才と読む】

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ぼんやりと、目が覚めてきた。 どうやら日付が変わったようで、朝日が目に刺さる。変わらぬ風景に変わらぬ鳥のさえずり。任務中というのにこんなにも安らいでいいのかと、スャムが自分に呆れたその時。 もたれていた木の後ろでがさりと音がした。 一気に目が冴え、腰から短刀を引き抜き、構える。 「誰だ」 短く問えば、ゆっくりと木の後ろから、音の正体が姿を現した。 「待て待て! 別に怪しいもんやあらへん! 」 騒々しい声に、スャムは眉をひそめた。 「五月蝿ぇ。どこの手の者だ」 短刀を首に押し付けて迫ると、男の綺麗な空色の目に、怯えの色が走った。 「いやぁ…どこの手の者って言われてもやな…えっと、別にあんたに何かするつもりやないんやけど、見かけたから…その」 しどろもどろに答える男を眺めて、スャムは武人ではないな、と判断した。 「その訛りは真焔帝国か。使節か何かか?」 武装を解いて、言ってしまってから後悔した。 (使節なら正式に入国できるだろうが、馬鹿野郎。なめられたらどうする) 案の定、男は少し素を出した。 「あっはっはっ! お前何いうとんのん! 使節やったら正式に入れるやん! こんなとこおらへんやん!」 短刀を下されたからか、突然態度が大きくなる。嬉しそうにひっひっひっと引き笑いをする男。スャムは露骨に嫌そうな顔をした。 「だったらなんだ。殺すぞ」 とうとうめんどくさくなり、スャムは殺気をたぎらせた。 武術の腕一本で上り詰めた地位ゆえに、実はそんなに頭は良くないのだ。そんなスャムの少し短絡的な性格を察してか、男はその場に腰を下ろした。 「まあ待てまあ待て。説明するやん? 聞けや」
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