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五章【ありえないことはよく起こる】
目隠しをされ、口枷され足枷をされ、手まで縛られ、自分がどこに座らされているのかもわからずに、カルシンは途方に暮れていた。
(なんやねんな…ホンマ)
この状態で、何ヶ月待たされているのだろう。
土の湿った臭いから、地下であることは察せられるのだが、いかんせん目も見えない口も使えない。
口枷のせいで溜まった唾液は気持ち悪いし、ずっと同じ姿勢でいるせいで腕も足も感覚がない。何ヶ月もの間水すら飲んでいないのだ。
精神力だけでなんとか耐えているものの、今にも意識が飛びそうである。
正直放置するなら殺してくれとまでカルシンは思っていた。
(まあ、もしかすると生き埋めっちゅう事もあるかもな)
まるで他人事のように自分の生死を考えていたカルシンの耳に、暗闇を切るような音が飛び込んで来た。
かん、かん、と遠くで鳴る音は、空白に石を投げ込んだような衝撃をカルシンに与えた。
(人おんのかい!)
この男、短絡的。
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