第1章

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名護野方面からの下り列車が、高架上のホームに到着し、どっと人が吐き出された。いちいち探す必要なんてなかった。つぐみの姿はすぐに見つけられた。 毛先がゆるくカールしている、ふわっとしたミディアムショートヘアーに、大きめの白いもこもこセーター、黒いロングスカート、そして彼女にぴったりの薄紅色の春色コート。 実の視線にも気づかず、つぐみは階段を下りて、南出口からロータリーへ向けて歩いてくるところだった。 「つぐみねーちゃん!」  バカでかい声に、つぐみの肩がびくっとなる。怯えたように、左右を見回していたが、道路を挟んで正面にいる実に気づくと、こわばっていたのがたちまち笑顔になった。車が来ないのを見計らってすぐに走ってきてくれた。 「実くん! おー、どうしたの?」 「ちょっと、……迎えに」 「え? 私を?」 「うん」 うなずきながら、後ろに隠した花束を握る手に力をこめた。 「つぐみねーちゃんにちょっと、言いたいことがあって」 
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