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「えー何、なんなの。何か気になるなぁ」
つぐみの十歳上とも思えぬ無邪気な笑顔を見ていると、実の胸は締め付けられるようにドキドキしてきた。隠していた花束を、なけなしの勇気をもって彼女に差し出した。大輪の花の甘い香りが、ふたりの間にぶわっと広がる。
「つぐみねーちゃんっ! ……お、おれと、結婚っ、してくださいっ!」
つぐみが笑顔のまま凍りつく。まだ保泉駅に残っていた人たちが振り返ってこっちを見つめている。みんなの口もあんぐり空いている。
一世一代の告白に実の全身は熱くなり、鼻息も荒くなった。やっと言えた。やっと言えたんだ。もうずっと前からつぐみを好きだった。十八歳になるのを指折り数えるほどに。
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