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第2章
日向つぐみは、実の隣の家に住む、十歳年上のいわゆる近所のお姉さんだ。普通、十歳も離れていたらそんなに会う機会もないかもしれないが、母親同士が仲がよかったこともあり、母がパートに出るときはつぐみの家に預けられたこともあるので、高校生だったつぐみにもかわいがってもらっていた。
実は、父と母の三人家族だった。母は優しい人だったが、いつも怯えていた。彼女が恐れていたもの、それは彼女自身が親に逆らってまで選んだはずの伴侶だった。
父は普段は存在感が薄く、背中をまるめてぼうっと座り込んでいるような人だったが、夜に酒を飲むと豹変した。怒りっぽくなり、母の些細な失態をせめたて、暴力をふるうようになるのだ。夜にそれが始まると、実は布団の中で小さくなって震えていた。酒のせいで毎夜モンスターになる父親が怖くて怖くてたまらなかったし、翌日顔にあざをつくっている母を見るのも胸が痛かった。
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