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『いつでもうちに来ていいからね。何時でもいいからね。夜でもいいよ。わかった?』
家に遊びに行くたび、つぐみはそう言ってくれた。まだ7歳だった自分には、その言葉がどれほど心強かったかわからない。
だがそれから四年、実が小五になるのを待たずに母が死んだ。葬式に来ていた大人たちの話によると、心労がたたって、ということだったらしい。言葉を濁していたが、実にはわかった。母を殺したのは父だ、と。
父は葬式で、棺桶にすがりついて泣いた。その姿に近所の大人たちはもらい泣きをしていた。これで彼も父親として、心を入れ替えるだろう、と誰もが思った。だが葬式から数日後、カップ酒一杯でもとのモンスターに戻った。ただひとつ違ったのは、暴力の矛先が妻ではなく子どもに向くようになったことだ。
実はあざをつくって学校に行くようになった。教師も父親の暴力に気づいていたと思うが、問題が表沙汰になると面倒だったのだろう。「転んだ」と言えばみんなそれを信じた。父が夜勤の時は、つぐみの家が実を預かってくれたので、その時だけはほっとすることができたが、それ以外は毎日地獄だった。父も外面はよく、むしろ酒を飲まなければおとなしい人だったので、つぐみの両親もそれとなくいさめることしかできなかった。
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