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──何が“俺は凡人”だ。
仮に私が変人に分類されるのなら、白石だって同じカテゴリに入るはずだ。確かに、細かい事を更に一々細部まで思案した挙げ句、結果として他人がまるで理解出来ない様な行動も平気でしてしまう性質が自分にあるのは、自覚している。疑問に思った事はとことん分析して突き詰めてしまわなければ気が済まないのだ。そして私のその性質は、この時代の合理的で淡白な流れと逆行している。
タオル片手にリビングに戻ってみると、白石はまるで自分の家にいるかのように寛いでソファで伸びをしていた。細長い身体とシャープな輪郭が相まって蟷螂のようだといつも思う。
「雨、夜までには止まない予報だった」
子どもみたいな言い訳を述べてからりと彼は笑った。どうやら泊まり込む気でいるらしい。
「車なんだから関係ないだろうに」
「移動装置」
にやりと白石は笑って、本題と無関係なところで修正される。
「意味は間違っていないんだし、同じことだよ。年配者がシューズボックスのことを下駄箱と呼ぶのと同じで」
良くないなあ、彼は私との生産性のない議論をむしろ楽しんでいる。私たちはいつもこうなってしまう。
「良くないって何が」
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