2201/7/21/16:52 楠木修治

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私には子供はいないのであまり詳しく覚えていないのだが、要は日本国籍所持者は子を出産した際、養育を自分でするか国に寄付するか選択できるという制度なのだ。寄付された子の親権はその時点で国に移り、国が養う。就学期未成年育成センターは、その子ども達が居住し教育を受ける施設として使われている。同時に既存だった小、中、高までの義務教育制度は廃止され、それらが一括してセンターに託されるようになった。 今や国有未成年はステータスである。一般家庭の未成年も週に三日そこに通ってきているが、受けるレッスンの量や生活の質のきめ細かさのレベルが国有未成年は遥かに異なるのだという。 全国に二万を超えるセンターが設立されており、就学期未成年のうち三十パーセントは国有未成年なのだと──どこかのニュースコンテンツで目にしたことがある。 「なんでこんな事を話したかっていうとさ、入ったんだ今期」 ラボに──そこまで言って、白石は溶けかけのアイスを一気に口に押し込んだ。腹壊すぞ、と私が言うと冷たいものは割と平気なんだとけろりとしている。彼は自分がもうあまり若くないという事を認識していないらしい。 「入ったって、センター出身者が? 」 「そう。待望の一期生」 私は意表を突かれた。噂程度と思っていたが、センターの子ども達が優秀だというのはどうやら本当なのらしい。 「企業審査もあるんだけど、国有人材を雇うと資金援助もあるからさ。まあその代わり年間利益の10パーセントは国に納めることになってて。それを差し引いてもお得なんだよ色々」 そういう仕組みになっていたのか。
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