2201/7/21/16:52 楠木修治

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下品な言い方をすれば、国有人材は企業にとっては金蔓(かねづる)、国にとっては比較的自由に動かせる駒──といったところか。 「で、どうなの実際。“一流の教育を受けたセンター出身者”っていうのは」 「まあ優秀だよ」 そう答えたものの、白石は顎を撫でて暫し考え込んだ。 「そう──礼儀も弁えてるし技術も知識も申し分ない。そういう教育を受けたんだろうな。ただ何だろう──ああうまく言えないな」 珍しく歯切れが悪い。 「単純に親なし子っていうのとも違うんだよな。親なし子は昔からいただろ。俺は部門が違うからしょっちゅうその子と関わるわけでもないけど、ただ何となく──センターは窮屈だったんだなって思ったんだ」 結局そこに行き着くわけか。 「考えてみれば、センター制度の成否判定はこれからってところなんだろうな。子ども達が成長して社会に出て初めて実態が分かる。国有未成年どころか、私は普通の家庭の子どもが今どんな風なのかさえ知らないよ」 白石は尚も唸っている。
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