2201/7/21/16:52 楠木修治

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ふと点けっぱなしだったメインのスクリーンを見ると、観ていたコンテンツは会話に夢中になっている内にとっくに終わっており、ニュースコンテンツに切り替わっていた。それ以上小説の話をしたくなかった私はわざと音量ヴォリュームを上げた。小さな島島の地図画像がスクリーンいっぱいに映し出されている。 ──また北方領土問題か。 このところ(にわ)かに騒ぎ立てられている。日露サミットで領土返還が活発に叫ばれていた昔と違って北方領土問題はここ何十年、放置されっぱなしになっていた。昔のように豊かな資源が得られるでもないし、住人もいないからだろう。それならばいっそ世界共有地域にでもすれば良いなどと私は思っていたのだが。 最近、なぜか北方領土問題が再燃しており、日露関係も次第に険悪になってきているのだった。 アナウンサーが地図をバックに原稿を読み上げる。 〈──昨日(さくじつ)のサミットでも晃久(あきひさ)元首はこの問題を提起しましたが、依然としてロシア側は姿勢を崩さず、そもそも領土問題の事実は存在しないと認識しているとの返答だったといいます。更に、コスタヤ大統領は「これ以上この件で日本側が要求を続けるようであれば軍事的な対応も辞さない」との声明も発表しており── 〉 「まずいな」 白石の顔つきが険しくなる。 「これ、多分近い内に──」 結句は言われなくても想像がついた。
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