2201/7/21/15:23 棗

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ここに何があるでもないし、何をするでもないけれど、気が済むまでこの場所で周りの景色を眺めている。素朴で自由に伸びる緑の草たちは、なぜだかわたしの気持ちを落ち着かせてくれた。蹲み込んだそのまま目を瞑って、音を聴く。文字で表記できない葉擦れの音や正体不明の虫の声。柔らかい地面。ときおり動く熱風。そして、わたしの心臓の音。 ──あれは雑草だよ。 いつだったか、ここの植物のことを保護職員の誰かはそう評した。その言い方は、まるでそれが正規の植物ではないというような口振りだった。 ──雑草と、そこの鉢植えはどう違うんですか。 わたしはそう返したと思う。別に反抗的な気持ちからではない。純粋に分からなかったからそう返した。相手はなんと答えたのだったか。その先のやり取りを覚えていないことからすると、きっとあのとき答えは得られなかったのだろう。大人の基準は難しい。難しいけれど、わたしはそれを覚えなくてはならない。それを信じて、守らなければならない。 目立たないように元来た道を辿りながら、こんなに暑いのならば帽子を被ってくれば良かったな、と思う。太陽は灼けつくように熱い。その光線は攻撃と思えるほどの強さでわたしの皮膚を刺してくる。それに、シューズがかなり汚れてしまった。屋内と屋外では汚れ方が随分と違う。わたしはルームシューズのまま外に出て来てしまっていた。
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