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保護職員は同じように素っ気ない態度で、ナツメ、と言った。
──ナツメ。
だからわたしは棗という名前なんだ、とぼんやり思った。
適当に付けられた、名前。
わたしは物心がついた時からここ、就学期未成年育成センターにいて、ここの生活しか知らない。
不幸ではないと思う。こんなものだろうと思う。
昔は、親のいない子どもはコジと呼ばれて偏見を持たれたそうだし、住む場所もシセツと呼ばれる小さくて不衛生な建物だったそうだけれど、今はそんなことはない。日本の子どもの三十パーセントはセンターで暮らしているのだそうだ。
──あと七年。
少なくともカリキュラム13になるまで──十九歳になるまで──はセンターにいなければならない。
──そうじゃなくて。
十九歳になるまではセンターにいられる、だ。十九歳ってどんな感じなのだろうと思う。ちょっと怖い。わたしは今までもずっとこんなに生きているのに、それなのにまだ子どもだというのが時時不思議だ。先はまだ分からない。大人になったわたしはもっと分からない。“ちゃんと大人”になれるかどうかについては怖いを通り越していて──。
肌が焼ける。足元は草で蒸れている。また帽子を被ってくるのを忘れてしまった。
わたしはもう一度空を見上げた。
「珍しいな」
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