2201/7/22/14:46 棗

4/6
前へ
/100ページ
次へ
突然。 後ろから声がしたのでわたしはどきりと振り返った。昨日と違って声の正体はすぐに知れた。 ──大きな目。 真っ直ぐな栗色の髪を綺麗に顎のあたりで切り揃えた、はっきりとした顔立ちの少女がそこに立っていた。 年齢はわたしと同じくらい──十二歳くらい──に見える。 「空」 彼女は聞き取りやすい声でそう言って、わたしがさっきまで見上げていたスカイブルーを目線で示した。 「こんな青いの。変わったことが起こりそう」 ま、起こってるけどと軽く笑ってわたしの顔を直視する。明らかにわたしに向かって話しかけている。 「その制服カラー、センターの子でしょ。何、家出? 」 わたしの動揺に構わず、少女は初対面のわたしにいきなり無神経な質問をしてきた。こんなタイプの人間は初めてだった。 「──ちがう」 「じゃ何してんのこんなとこで」 べつに答える義務はない。そのまま立ち去ってしまえばそれで済む。 それなのにわたしはどうしたんだろう。 わたしはなぜかそうせずに、 「散歩……」 質問に素直に答えていた。 少女はきょとんとした顔になる。 「さんぽぉ? 」     
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加