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突然。
後ろから声がしたのでわたしはどきりと振り返った。昨日と違って声の正体はすぐに知れた。
──大きな目。
真っ直ぐな栗色の髪を綺麗に顎のあたりで切り揃えた、はっきりとした顔立ちの少女がそこに立っていた。
年齢はわたしと同じくらい──十二歳くらい──に見える。
「空」
彼女は聞き取りやすい声でそう言って、わたしがさっきまで見上げていたスカイブルーを目線で示した。
「こんな青いの。変わったことが起こりそう」
ま、起こってるけどと軽く笑ってわたしの顔を直視する。明らかにわたしに向かって話しかけている。
「その制服カラー、センターの子でしょ。何、家出? 」
わたしの動揺に構わず、少女は初対面のわたしにいきなり無神経な質問をしてきた。こんなタイプの人間は初めてだった。
「──ちがう」
「じゃ何してんのこんなとこで」
べつに答える義務はない。そのまま立ち去ってしまえばそれで済む。
それなのにわたしはどうしたんだろう。
わたしはなぜかそうせずに、
「散歩……」
質問に素直に答えていた。
少女はきょとんとした顔になる。
「さんぽぉ? 」
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