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なのに、どうしてだろう。わたしは無断外出をやめることが出来ない。どうしても外に出たくなる。その疑問にもまた、DIは答えてくれない。
「──ケルスティンていう、あたし」
怖いほどダイレクトにわたしの顔を見て、少女は突然そう言った。
「ケルスティンていうんだ」
他人からはっきり見られることに慣れていないわたしは戸惑って、思わず半歩後ずさった。
「ケルスティン?」
「そう」
聞き慣れない響き。
「外国人? 」
違う違う、と彼女は笑う。
「ご先祖様の遺伝がなんか色々混ざってるみたい。ルーツはどこか知んないけど」
ご先祖様なんて言葉久し振りに聞いたな、と変なことを思った。
「適当に付けられたの、名前。周りが勝手に盛り上がって、ケルスティンが一番可愛いだろうって。生まれも育ちも日本なのにさ」
笑いながらブルーグレーがかった黒い瞳をくるんと動かす。
「そっちは? 名前」
そう言われるのも初めてだった。
「棗」
ふうん、ナツメ──口の中で繰り返したらしい彼女──ケルスティンは唇をみっと上げて歯を見せた。
「変な名前ぇ」
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