2201/7/21/15:23 棗

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右に進んで、しばらく直進して、三つ目の分岐点を左に折れる。網目のように細かく張り巡らされた道をどう進めばどこに突き当たるか、わたしはもうすっかり把握している。街路樹の種類や家の素材まで指定されている住宅区画の景観なんてどこも似たり寄ったりだし、たぶん普段オートモビリティで移動しているここの住民よりずっと詳しいはずだ。しばらく歩くと工業用の道路とぶつかる。一般道路とは明らかに分けられているのだけれど、私はフェンスの隙間を抜けて中に紛れ、その端を歩く。(かたわら)を猛スピードで走り去る業務車両が爽快で、つい近くまで行きたいと思ってしまうのだった。 わたしは保護職員の目を盗んでは時時こうやってこっそり散歩をする。 今まで知らなかった道を知っている道にしていく作業は、愉しい。自分がどういう環境に住んでいるのか把握して、まだ見ぬ世界に触れるのはわたしにとって最もわくわくする体験だった。 * 「(なつめ)さん! 」 センターに戻るなり待ち構えていた日菜子(ひなこ)さんに捕まってしまい、わたしは早速窮屈な思いをすることとなった。 わたしの担当保護員である日菜子さんは背が高いので、眉間に皺を寄せて正面から仁王立ちされるとかなり迫力がある。そのポーズのまま腕組みした彼女は目だけでわたしを見下ろした。 「私、ずっと言ってるよね、無断外出しないでねって。体に悪いし危険だよって。今月だけで何回目 」 完璧にカールした髪を搔き上げる。この空気は何度経験しても慣れない。 「ごめんなさい」 「“ごめんなさい”って」 彼女は苛苛(いらいら)とため息を漏らす。 「この前もその前もそう言ったよね」
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