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一般住民にとってあたしたちは多分、昔の人だ。それか外国人だ、この場所みたいに。自分たちとは全然違うルールがあって、生活は原始的で、遠くから見る分にはちょっと面白いけど関わりたいとは思わない人たち。そんなふうに見られているんだろう。
「寝たら? 」
通り掛かった水沢の奥さんがあたしに気づいて声を掛けてきた。隣にリサもいる。シャツがぶかぶかだ。
「昨晩も仕事であんまり寝てないでしょ」
平気とあたしは元気ぶってみせる。
「ねえ、ロイ──どこにいるか知ってる? 」
「見なかったけど。仕事の準備とかしてるんじゃない。奥の方覗いてきたら」
「うん、いいや。聞いてみただけ」
分かってる。ロイだって大変なんだ。
「そう」
だったら寝ときなさい、子供は寝なきゃ伸びないよと水沢の奥さんは冗談めかした。リサはあたしたちの会話に加わろうとせず一歩引いたところで窺うように立っているだけだ。
「リサ」
リサは一瞬で反応して目をひと回り大きくした。黒い目がまん丸くて猫みたいだ。
「リサはちゃんと眠れた? 」
「はい」
指先まで硬直させて生真面目に答える。敬語が抜けない。年齢に不釣り合いな警戒心を、リサは持ち合わせていた。水沢の奥さんも苦笑いをあたしに向ける。
「そのまま放っておいたらずっと同じ場所に座りっぱなしだからと思って、ちょっと連れて歩いてるんだけど、なかなかね」
「リサは頑張ってるよ」
「そうだね」
「今度またあたしが外に連れてってあげるから」
「はい」
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