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2201/7/21/16:52 楠木修治
雨の匂いがする。
街全体が薄暗く湿気を纏っていて重く、もうすぐ降るな──と見上げた刹那、最初の一粒がつっと鼻先を掠めた。
自然と共存するのは難しい。近頃よくそんなことを考える。雨を疎ましく思うようになったのはいつからだったろう。少なくとも子供の頃はそんな風に感じなかったように思う。地球のメカニズムは人間の変わらぬ無力さを思い出させる。自然災害ほどの大げさなものに限らず、こうした気象現象だってそうだ。
二十三世紀。大昔の人たちは無責任にも、この時代に魔法のようなハイテク未来都市の夢を託していたようである。けれど、出来ることと出来ぬことの境はある。どんなに時代が流れたとしても人間は所詮人間である。
実際は、雨が降っただけでこんなにも弱い。
ただ成すが儘に身を任せる事すら出来ない。濡れるのは嫌だと思うし、そのままでは風邪をひいてしまう。
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