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2201/7/21/15:23 棗
天に掛かる綺羅星は薄織の如くに
誰かが呼んだ気がした。ひどくか細い──男なのか女なのか、子供なのか大人なのかさえも分からないような朧ろさで。
わたしは振り返る。
真っ白な昼下がり。
白飛びしたスクリーンみたいな陽の光が痛くて思わず目を細めたけれど、残光はまぶたの裏に強烈に残って絡まった。もう一度草陰の間にまで目を凝らして見回したときには、すでに人らしき姿は確認出来なかった。
──気のせい。
思わずため息が漏れる。こんな場所に人なんかいるわけが無いのだ。
いまどき徒歩で外出する者など殆どいない。それにこの日射し、この気温である。生身で散歩なんてする変わり者──もとい問題児はわたしくらいのものだろう。
不意にふわふわと軽いめまいを感じたわたしはその場に蹲み込んだ。それだけで子どもで小柄なわたしの姿は雑多にはびこる植物にすっぽりと覆い隠されてしまう。夏は、人間には厳しいけれど植物には嬉しい季節らしい。ここに来ればそれが良く分かる。この、区画の端にある余ったスペースは今や植物で余すことなく埋まっていて、その密度は先月よりも濃く、丈は二倍にもなっている。
誰もいない。本当のひとり。
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