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それほど昔ではないとある場所にねこがおりました。
ねこは野良で、ある時優しいご主人に恵まれおうちができました。
暖かい寝床、温かい食事、沢山のおもちゃ。
野良の生活とはまるで違いました。
しかし、一緒にご主人と生活するうちに、ねこはとても不満を持つようになりました。
ご主人はいつも同じ場所に座り、目の前のものを眺め続け、白い何かをカチカチとさせます。
そんな時にねこが鳴いても、ご主人はしかめっつらで上の空なのです。
ねこは思いました。
ちょっと甘えてゴロゴロすれば、きっとご主人も機嫌がよくになるに違いない、と。
ねこはご主人の目の前に躍り出るとゴロゴロとのどを鳴らそうとしました
ところが‥‥
「うわぁぁぁぁ!?」
機嫌がよくなるどころか、ご主人にねこは追い払われてしまいました。
逃げ出したねこが振り返ると、ご主人はなにやら大慌てで目の前のものを食い入るように眺めながら白い何かをすごい勢いでカチカチとさせています。
ねこには訳が分かりませんでした。
ご主人がお出かけしたある日、ねこはご主人が座るあの場所に座りました。
そしてあの白い何かに聞いてみました。
「おい、お前。ご主人はなぜボクがゴロゴロと甘えているというのに、いつも追い払うんだ? なぜ血相変えてお前を可愛がるんだ?」
白い何かはこう答えます。
「おいおい、お前さんが甘えてるだって? お前さんはご主人の仕事の邪魔をしているだけじゃないか。必死に打った文を台無しにされたら、誰だって怒るだろうよ」
なるほど、ご主人はどうやら大切な仕事をしていたからねこを追い払っただけのようです。
しかし白い何かは続けます。
「オレを可愛がるだって? オレはお前さんと違ってご主人の仕事を手伝っているのさ。お前さんが台無しにした文を直す手伝いをしてやってるだけさ」
なにやらねこはカチンと頭にきました。
なんでこいつはこんなにも上から目線で、しかもなんと偉そうなのでしょう。
気に入りません。とてもこいつとは馬が合いそうにないと、ねこは思いました。
「お前‥‥なまえは?」
ねこの問いに、白い何かは答えます。
「『マウス』さ」
Cats hate mouse. -ねこはねずみがきらい-
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