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三年前のある日
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その日、都内某所の有名ホテルで、千代田という男の古希を祝うパーティーが行われていた。
千代田は、千代田カンパニーを一代で築き上げた敏腕経営者だが、ワンマン気質で、気難しいことでも有名だ。
その千代田が齢七十を迎え、自身の後継者を選んでいるという噂が、水面下であったものだから、幹部社員たちは内心、色めき立っていた。
会場に千代田が現れ、拍手で迎えられた。
割と長い挨拶があった後、乾杯し、歓談の流れとなった。
「社長、お誕生日おめでとうございます」
「ふん、七十がめでたいものか。どうせ君も、こんな老いぼれ、早く退けと思っているんだろう」
「そんな、滅相もない」「社長にはまだまだ、お元気でいて頂かないと」
そうです、その通り、と、千代田の周りを、イエスマンたちが取り囲んだ。
そんな幹部たちの胸中を見透かしたように、千代田は、不機嫌に鼻をならした。
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