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ふと、部下のほうを見やれば、一様に笑顔を浮かべている。
それは困惑の笑顔であったのだが、千代田はこの状況をどう切り抜けるかで混乱しており、その微妙な表情に気が付くことができなかった。
そして決心する。
(これはチョコレートだと、言い張るしかない)
千代田は、覚悟を決めて咀嚼を続けると、根性で吐き気を堪え、味気ない異物を飲み込んだ。
そして、少し涙目になりながら、それでも毅然と言い放った。
「ほう、花のチョコレート菓子とは面白い。君のところのかね」
と、食品部門の幹部に話を振った。
「あ、っふぇ!?」
突然、話を振られた幹部は、変な声が出た。曖昧な返事を返し、何かもごもごと言いながら、愛想笑いでごまかした。
だが、千代田の作戦は、少なからず部下たちに動揺を与えた。
造花なら食べられるわけがないのに、彼ははっきりとチョコレートと言ったのだ。
(もしかして、チョコだったのか?)
(チョコだ)
(何言ってんだ、この爺さん)
(え、これ、俺も食べたほうがいいの?)
様々な思惑が渦巻く。
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