三年前のある日

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 そして、ある男が気付く。  (そうか、これは試験だ)  古希のパーティーとは仮の姿。実際は、千代田の後継者を選ぶための試験会場なのだ、と。  王が、黒を白だと言えば、それは白。  つまり、造花をチョコレートだと言えば、それはチョコレート。  千代田は、自分たちの忠誠心を試しているに、違いない。  「確かに、これは面白い商品ですね。形も綺麗で、若い女性に受けそうだ。私もひとつ、いただきます」  その男は適当なことを言うと、自身も花の蝋細工を食べた。  もぐもぐという口の動きが一瞬止まったように見えたが、ごくんと飲み込むと、千代田に笑いかける。  (こ、こいつ・・・抜け駆けを!)  (やっぱり、チョコだ)  (次期社長の座、渡してなるものか)  再び、様々な思惑が渦巻いた。
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