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同じマンションに住む綾瀬仁美とは、物心ついた頃からいつも一緒にいて、高校なんかも相談して、同じとこに決めた。
もっとも成績は仁美が上、俺に合わすか仁美に合わすかで少し揉めて、結果俺が猛勉強をする羽目に。
いや、それは結果オーライなんだが。
ともあれ、そうしていつも一緒にいるのが当たり前だったけど。
はたと気付くと、俺はあいつの事が気になって仕方なくなっていた。
視界の端に入ると嬉しかったり。
他の男と話しているのを見かけるとムカついたり。
名前を呼ばれると元気に返事をしてしまったり。
目の前で揺れる髪を、掴みたくなったり──。
と、無意識のうちに、本当に撫でてしまっていた。
「ん? なに?」
仁美が、くるっと振り返って不思議そうに言った。
「え、あ、いやっ! か、髪……っ、綺麗だな、と思って!」
慌てて言うと、仁美はにこっと笑う。
「なによお? 褒めてんの? ははーん、もうすぐバレンタインデーだから、チョコ欲しさにゴマスリを」
「ち、違うわ! お前のチョコなんか嬉しくねえし!」
「ふうん、そうなんだ」
仁美は笑顔のまま言う、俺の言葉に傷ついたとかそんな雰囲気じゃない。
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