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仁美は意地悪と思える笑みを浮かべて言う。
「え……」
いや、バレンタインデーにこの手のプレゼントと言えば……。
「残念でした、開けてからのお楽しみだよ」
「……先に残念でしたとか言われたくねえし……」
いや、チョコと思ってチョコじゃなかった衝撃は、無い方がいいのか……。
エレベーターが止まって、仁美が降りる。
「じゃあね!」
元気な挨拶はいつものとおりだが、いつもはエレベーターが閉まって動き出すまで居てくれるのに、さっさと歩き出して居なくなってしまった。
まもなく8階に着いて、俺も降りる。
他の階で鍵がかかる音が響いた、きっと仁美だろう。
自分の部屋に入って、もらった箱を改めて見た。
チョコじゃないとは言っていたが、今日はバレンタインデーだ、俺は少なからず期待してしまう。
このサイズならハンカチとかミニタオルとかかな。
確かに重さはなかった、きっとそうだろう。
チョコじゃないとは言え、今日のこの日にプレゼントって事は、それはある程度期待していいのだろうか。
いや、あいつの事だ、空箱の可能性もあるな、「やーい、期待してたのかー!」とか言われて笑い者に……。
包装紙を開こうとする手が止まった。
見ないで置いておこうか。
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