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だから、言い濁したりしない、俺もきちんと伝える。
「俺も、仁美が好きだ」
『──うん』
今度の返事は詰まって聞こえた、すぐにぐすんと啜り上げる音聞こえたから、泣いているのかも。
あー馬鹿なのは俺だ、電話なんかじゃなくちゃんと会って話せばよかった。そうしたら、抱き締めてやれたのに。
「仁美が大好きだ」
『嬉しい』
そんな素直な言葉に、じんと胸が熱くなる。
『チョコなんか欲しくないなんて言うから、もしかしたら他に好きな人いんのかと思ってた……本当に私でいいの?』
仁美の涙まじりの声に溜息が出た。
欲しくないなんていってねーし。
いつからだ? いつから両想いだった? お前も俺に会うたび苦しかった?
「当たり前じゃん、俺、ずっと仁美の事しか考えてなかった」
『じろちゃぁん……』
耳元で本格的にすすりあげる音が響いた。
このプレゼントを用意している姿を想像して、勝手に心は踊り出す。
嬉しそうに笑顔だったのか、緊張して引きつっていたのか──そして今はどんな顔でいる?
やっぱ無理だ、こんなに近くにいるのに、このまま電話を切れるはずがない。
「──待ってろ、今すぐ行く」
『うん、来て……逢いたいよ』
返事を聞く前に踵を返していた、部屋を出ながら電話を切る。
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