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二月十四日
皆の待ちに待ったバレンタインデー。
男の子は女の子からチョコを貰えるのか貰えないのかとドキドキして、
女の子は好きな男の子に本命チョコを渡せないかと渡すタイミングを今か今かと胸を高鳴らして待ちわびていた。
その日俺は、彼女がいる訳でもなく、カップルが溢れる夜の街を仕事帰りフラフラしながら自宅に帰っていた。
自宅の前についた時、ふと下に視線を落としてみると、箱のようなものが落ちてあり、誰かの落とし物か?とそう思いながら拾ってみるとピンクのハート柄で少チョコが入るくらいの大きさの箱だった。
何故俺の家の前に落ちているんだ?
自慢ではないが、俺の彼女いない歴は=年齢だ。だから悲しくも自分のものではないと分かる。だが、そうしたら、このチョコは誰のものになる?
俺は悩んだにすえ、一度家の中に持って入った。
いや、別にあれ?これやっぱり俺のものじゃね?って思ったわけではない。断じて違う。
俺は中身を見ないことには何も分からないと判断し、別に中身見ても問題はないよな?と誰もいない空間に一人虚しく言い訳をのべながらそっと箱の中身を見た。
するとそこに入っていたのはチョコではなく…。
【あんた、いつも仕事頑張ってるんだって?偉いじゃない。あたしてっきり弱虫なあんたなら半年ぐらいでべそかいて家に帰ってくると思ってたのよ?あんたが家出ていってもう一年ぐらいかしら?父さんがね、あんたいないと寂しいですって。というか、実家に顔ぐらいは見せなさいよ。あたしも久しぶりにあんたの顔が見たいわ。後、仕事もいいけど、しっかり息抜きはしなさいよ?倒れたら承知しないんだから!(追伸)ハッピーバレンタイン】
そう、箱の中に入っていたのはチョコではなく、バレンタインメッセージでもなく、お袋からの手紙だった。
この皮肉が混じってて、でも、優しさの感じられる手紙は間違いなく不器用なお袋からのものだ。
性格も字も曲がっているお袋からの気持ちのこもった手紙だった。
俺の貰ったバレンタインはチョコでもなく、メッセージでもなくはお袋の優しさの結晶だった。
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