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案の定、戻ると帰りの遅いふたり、というよりカズにエータが文句を言いまくった。文句は言いまくったけれど、流石に気付く。なんだか二人ともすっきりとした顔付きをしている。
アズは戯れ合う二人を微笑ましく思いながら、放って鍋の準備に取り掛かった。そのうちに、みんなが集まって、全員が開口一番に「邪魔して悪いねー」と揶揄ってくる。だったら全員帰れと言いたそうにエータはむくれた。むくれているけれど、なんだかんだでエータが嬉しくて仕方ないことをみんな知っている。
変わらないままで居たことは、会えなかった十年間を何かで補いたくないからではないとエータは思う。結局、自然のままに居たらそのまんまで居てしまって、そうして今は隣にちゃんとアズがいる。
わいわい賑やかにはしゃぎながら、エータだけじゃない、みんな同じことを思っていた。
鍋を囲みながら盛り上がっている隙に、アズとエータは二人して打ち合わせもなく立ち上がった。鍋の具材の追加を取りに台所へ向かうだけだけれども、ふたりきりはふたりきりだ。邪魔された見せしめに部屋と台所のドアをしっかり締めてやったけれど、別に誰も気になどしない。
部屋に背を向けてすでに用意してあった具材を持つ前にどちらからともなく手に触れた。
「アズ、好きだよ」
「うん。エータが好き」
やっぱり今更だなとお互い思いながら、次の言葉は重なった。
「……言うの本気で忘れてた」
そしてエータは思った。やっぱりあいつら邪魔だ!
おわり
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