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「ねぇ、ってことはさ、アズも住んでるの市内ってこと?」
居酒屋でテーブルを囲みながら、まず最初に誕生日が来たばかりのカズを祝った。その延長で年明けの成人式の話になる。
アズたちが住んでいる市は合併してやたらと広い。最寄で言うとアズの使っている駅はここよりもいくつか手前の駅だった。外れではあるが市内ではある。
「みんなで成人式出ようよ」
そう提案したエリカはつい先日、成人式で着る振袖を買ってもらったとかで待ち遠しいらしい。
「アズも着物着るの?」
そう聞いたのはミナミだ。着飾ったアズは目の保養になると気づいてしまった。是非とも可憐な着物姿を拝みたい。
「うん、おばあちゃんが縫ってくれてるの」
「楽しみだね、カズ」
想像で鼻の下を伸ばしてあるだろうふたりのうち、ユウヤは面白がってカズに振った。
「……なんで俺に振るわけ?」
「……なんでカズに振るわけ?」
カズとアズの不服そうな声が揃った。
カズは図星を指されて罰が悪い。アズはカズにからかわれると思った。二人にしたら本気で不服だったのだが笑いを買ってしまってカズが拗ねた。
それを見たアズがみんなと一緒になって笑い出したのでカズの機嫌もあっという間に直ってしまう。
エータがどうにもツボに入ってしまったらしい。
笑い飽きた残りの面々はさっさとグラスや料理に興味を移してしまっていて誰も突っ込まないが、突然エータが「痛っ?!」と声を上げた。テーブルの下でカズに足を思いっきり蹴られたのだ。
エータは遣り返すことなくカズを恨めしそうに睨みつけ、カズは子供っぽく鼻を鳴らした。
今度はアズがツボに入ってしまい、ふたりを挟んで笑い転げている。
「相変わらず、仲良しだね」
アズにそう言われると悪い気がしない。エータとカズはさっさと気を取り直したものの、やっぱりちょっと照れくさくて互いにそっぽを向いた。
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