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エリカは一連の遣り取りを盗み見ながら、くすくす笑った。
「うん。やっぱ良いね。あたし、あの三人がああしてるの凄く好き」
ほろ酔いのエリカは少し声のトーンが変わっていて、話を振られたミナミは面倒くさいとユウヤに視線を送りながら返事を返した。
「そう? 面倒くさいだけだろ」
「ミナミはすぐ面倒くさいって言う」
「実際そうじゃん」
どちらも少々酔っ払いなので、話はひたすら平行線である。
面倒くさいと視線を寄越す割にミナミも折れない。仕方なくユウヤはエリカを宥めに掛かった。
酔っ払いは一筋縄には行かない。しかも付き合いだして長いエリカとユウヤの場合、力関係は圧倒的にエリカに傾いて固定されてしまっているから余計である。
ふと向かいを見ると、エータとカズとアズ、三人が顔を寄せ合って面白そうにこちらを伺いながらこそこそ話している。
絶対あいつらは酔っていない! という確証がユウヤにはあった。
エータが酒に滅法強いのは知っていたが、何となくアズも強い気がした。カズは絶対に強いに決まっている。
ユウヤの持論では、マイペースな奴の方が酒に強い、である。強い、というよりは、マイペースな人間はペースを他人に崩されるのを好まず、ひたすら自分のペースで飲む。
かく言うユウヤもまるで素面のままである。
酔っ払ってりゃ気分も良いだろうけれど、あのにやにや笑いを素で受け止めるのはちょっと照れる。
言い合うふたりはいい加減放置して、ユウヤは恥ずかしそうに頭を掻いた。
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