第2話

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 アズは早熟な子供だった。その早熟さが、彼女を物静かな性格へと作り上げた。  遡ると幼稚園の時点で、周りの子供っぽさに馴染めず、学級というコミュニティが苦手だった。  子供は単純だ。異質なものと相容れる柔軟さもあるが、同様にその柔軟さで簡単に拒絶もする。  周りがアズを異質だと感じていたように、本人にも相当自覚があり、周りと上手くやるには合わせる必要があった。  当時のアズにとって、それは折れがたい一線であり、苦痛以外のなにものでもなかった。  周りに全て合わせないと受け入れられないなんて。一個くらい違う個性を持っていても良いじゃない。幼いながらに既に彼女はそんな思考を抱えていた。  結局他人に合わせることを拒否した彼女は周囲と馴染む努力をやめた。  単純な子供の世界はそれほど広くない。故に残酷でもある。それに気づいた時にはもう遅かった。  内向的な性格にどんどん拍車が掛かって行った。  早く大人になりたい。大人になれば変わると思っていた。  その中で、アズが唯一「学校は楽しい」と思えた三年間がある。それがエータたちと過ごした時間だ。  アズは五年生の途中で転校した。理由は良い学校に通うため。  子供思いな親の大義名分が、本当はただの見得でしかないことをアズは理解していた。  大切な友人と一緒に居られなくなることに理不尽さを感じた。  どうせなら後一年ちょっと待ってくれればいいのにと、部屋に篭もって泣きじゃくった。そんな彼女の気持ちを両親は汲み取ってくれなかった。  家出をすることも考えた。どうしたら、わかってもらえるかと。  そのくらい彼女には転校が苦痛だった。  今まで学校で上手くやれた試しがなかったことなど、結局知ろうとしてくれなかった両親が悲しかった。
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