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転校先の小学校以降、アズはあまり楽しくない学校生活を高校卒業まで続けた。段々と上手く立ち回れるようになってきて、少し仲の良い友達が出来て、部活に熱中してみたり、恋をしてみたりもした。
それなりに楽しんでみたつもりなのに、終始なにか欠けているような物悲しさが付き纏う。
欠けてしまったものがなにか、アズは明確に理解していたけれど、まるで見えない振りをした。そうすれば全て上手く自分自身を丸め込めた。
あの頃出来た自分をまねして、そして結局疲れ果てた。果てた結果、今のような自分に落ち着いてしまった。
最後に誰かにごめんなさいという言葉を告げた時に、諦めた。
馴染めなかった。地元の街も、実家も、アズは未だに好きではない。不仲になって飛び出した実家ともたった一年であっという間に和解したけれど、それがまた彼女は悲しかった。
見栄っ張りな親、どんなに我が子のためを思ってくれても、結局他人に対する見得が起因する。為にならないと判断したものは、徹底的に排除しようとする。
その最もたるところが彼女の交友関係だった。
転校した後、前の学校の友達と連絡を取ることを禁じられた。電話も取り次いでくれないし、手紙もたぶん勝手に捨てられた。
家でも外でも、アズは実家を出るまでひたすら「らしくない」自分を取り繕ってきた。それが本当の自分で構わないと諦めるほどに。
自由になっても身に着いた性質はなかなか消せないもので、ミナミが今年の春に再会したアズに違和感を覚えたのも仕方がないことだった。
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