第2話

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 クラスの中心的存在だったみんなと一緒に、いつも端にいたアズはみんなの輪の中に居られた。楽しくて仕方なかった。  誰の前でも自然体で居ることを覚えた彼女を煙たがる者は居なかったし、少し行き違いがあっても誤解を解く方法を覚えて、直ぐに元通り仲良く出来た。どうしても気が合わなくてぶつかり合う相手もいたけれど、それはそれで楽しかった。みんなそれぞれ、自分の個性を大事にしているということだと感じていた。  とにかく健全で明るい数年間を、アズは初めて過ごした。  良い事もたくさんしたけれど、いたずらも随分した。  賢い子供っていうのは大概大人に嫌われる。きっと頭の固い両親は、自分を含め、そんな彼らが気に入らなかったんだと、アズは未だに思っている。自分の頭で考えることが特意だったから、従順でないことが気に食わなかったのだと。  みんなの中でも、エータは一番アズの中で存在感の強い人だった。エータとカズは幼稚園の時から一緒だった。  ふたりだけは周りと異質なアズへ、いつだってみんなと同じに接してくれる。その頃からアズの中ではエータが特別で、カズは兄弟みたいな感じだった。  小学校に上がってクラスが分かれてしまった後、きっとエータは自分のことなど忘れてしまうとアズは思っていた。  彼はお日さまみたいな男の子で、いつも周りにたくさんの友達が居て――きっとそのうち自分のことなんてどうでも良くなってしまうだろう。でも仕方ないとアズは思った。  やっぱり馴染めない小学校生活で、時々遠くからエータを見かけては、それが彼女の支えになった。お日さまみたいな彼の笑顔が好きだったから、それが見られるだけで十分だった。だから自分から声を掛けたりしない。  ある日、エータの方からアズに声を掛けてきた。以来、彼は見かける度にアズに声を掛け続けた。偶然を装って。  その時、既にエータの中でアズは特別な女の子だった。彼女が傍に居ないのは、淋しいを通り越して不自然に感じるほどに。  アズの名前を呼んで、面白い話をして、彼女の笑顔を見るためにエータが必死だったことなどアズはまるで知らない。
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