第2話

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 前のクラスに馴染んでいたわけでもないのに、クラス替えでアズは新な不安を覚えた。そんな小学校三年の春、アズはエータと同じクラスになった。カズとも同じクラスになった。それだけでアズの憂鬱は拭われて、心が軽くなった。  カズは幼稚園の時からひたすらアズと同じクラスで過ごし、彼もエータ同様、アズを笑わそうと必死だったのに、どうしてもエータのように上手くやれなかった。またアズと同じクラスで、そしてそこにエータも居ることは悔しいけれどほっとした。  それからは、セイカとユウヤ、ミナミが加わって、いつも彼らがアズを助けてくれた。  あっという間にみんなと仲良くなって――友達を作るって本当は簡単だったのかもしれないと錯覚しそうになったけれど、きっとそれは錯覚ではなかったはずだ。  エータはいつも穏やかで、アズは彼と一緒に居ると安心する。どんな時もあっけらかんと構えていて、それは彼が自分と違って強い人だからだろうと、子供ながらによく思った。  みんなと騒いでいる時はもちろん楽しいけれど、それは一時的な気分の高揚で、後になるとどっと疲れが出て、喪失感に襲われる。  エータと居ると、常に素直な自分で居ることが出来て、終始温かい気持ちで居られた。いつのまにか微笑んでいる自分がいる。  困ったり暗い顔をしていると、エータはいつの間にか隣に居て、さり気無く励ましてくれる。  エータが優しいのは自分だけではなくて、彼はみんなにも同じように優しい。それでも、自分の隣に居てくれる時は、自分だけを見てくれるからうれしかった。  辛い時、アズは変わらず当時のこと、そしてエータのことを思い出す。  今でも変わらない、アズにとってエータは特別な人。
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