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アズはエータをしっかり見送ってから、ミナミに改めて向き直った。
「ミナミ、ありがと」
「ん?」と首を傾げてから、ミナミは渇いた笑いを漏らした。
「俺もなかなか気づかなくって悪かったよ。けどさ……」
そこまで言って、ミナミはアズに言って良いものか一瞬考えた。
今更といえば今更であるし、相変わらずといえば相変わらずで、どうにもならないことだろうと思って言うことにした。
「あいつさ、昔っからあれで結構敵作ってるんだよ。普段大人しいくせにさ、面倒くさい」
赤くなっているアズを余所に、丁度良い機会だから皆まで言ってやるとミナミは続ける。
「カズの場合は普段からああだからさ、“カズだから仕方ない”で済むんだよ。でもあいつは普段が違うだろ? 特別だって言外に言ってるようなものだよ」
と、そこで一旦切ったミナミは「ねぇ、ちゃんと聞いてる?」と尋ねた。アズは真赤な上に俯いてしまっている。「聞いてる……」とか細い声で返って来たのでミナミは続けた。
「だからさ、どうしてそれで敵を作ることになるかって話。お前は自覚ないだろうけれど、大山みたくお前のこと良いなぁって思う男はあいつら以外にもたくさん居るってこと。エータがまるで独り占めしようとしてるように見えるわけ。あー……」
遂にアズの反応にミナミが負けた。「あー、も~」と参ったように頭を掻きながら「とにかく」と最後に念押しした。
「少しは自覚持て」
完全にアズは机に突っ伏している。無理を言ったかなと思わなくもないが、そのくらいは頑張ってもらわないとミナミにとっては面倒くさいことが増えて困る。
そしてミナミは口に出さずに心の中で愚痴った。
どうせくっ付くんだから今すぐくっ付け!
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