第4話

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 大人になるに連れて、アズはひとりでもそれなりに人付き合いが出来るようになった。少しずつ上手な自分を晒す方法を身に付けて、上手く隠す方法も見つけて――内向的な自分を演じることはめっきり減ったはずだった。結局、そんな自分を自分で壊してしまったけれど。  それでも今、こんなに素敵な友人がたくさん居る。それはとても心強いことだった。  人間関係のごたごたは、いつだって大なり小なり付いて回ることだし、目立ちたいわけじゃないのに周りから浮きがちだったアズは、人よりたくさんそんな経験をしてきた。  問題は友情だったり恋愛だったり様々だけれど、諍うことが苦手な彼女の解決手段は、いつだって自分が引くことだった。  長引けば長引くほど、どんどん誰かが傷付いていく。それを見ているのが一番堪える。  自分が悪者になってしまえば、自分以外の誰かがそれ以上傷付くことはない。だからアズはそうしてきた。  それで周りから色んな人が離れていっても、そんなのは元々慣れっこだから構わない。それで良いと、それが最善なんだとアズはいつも思ってた。  そんなのは自己満足だと大学の友人たちは言う。  誰が自分にとって一番大切か、なにを守るのが一番大事か。それくらいもう自分でわかる程度には自分たちは大人なのだと。だから間違ってないと思える時は堂々と構えていれば良いと。  そんなことを言ってくれる友人が、今までアズの周りには居なかった。少なくともエータたちと離れてからは。  あなたらしくないと指摘されることも、あなたらしくなさいと指摘されることもなかった。  嬉しい。とても頼もしい。  そう思う気持ちとは裏腹に、終始付き纏う不安もある。  やっぱり自分のせいで誰かが悩んだり悲しんだりするのは嫌だ。  そんな風にうじうじ悩むアズを見透かしたように友人たちは言う。  悩み込む前に、なんでも言っちゃっていいんだよ。アズの暗い愚痴聴くのなんて、きっと朝まで掛かったってへっちゃらだよ。いくらだって聞いてあげる。ちゃんと吐き出さないと苦しくなっちゃうよ? 言いたいことは口に出して言えば良い。そうじゃなくちゃ間違ってても間違ってるって教えて上げられないでしょう。  図書館前でエータと待ち合わせをしながら、アズはそんなことを思い出していた。一緒に昼休みのことも思い出されて少し照れくさくて、それでいてとても心が温かくなった。
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