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若者が目下悩み、それでも足を突っ込み突っ走るといえば、大抵は「恋愛」だ。
アズは恋に興味が無いわけではない。それでも、突然「好きだ」と言われれば流石に困るだけの理由があった。アズに「好きだ」と言った青年はアズのクラスで一番打ち解けている友達であったが、アズはまるでそういう対象に彼を見ていなかった。
誰かに好意を持たれることは悪い気はしない。素直にうれしいことだ。しかし、それしか言わないのに見返りを求める彼の態度は嫌いだった。
大切な友達だから大切に扱いたいのに、彼の行動はそれを鈍らせた。アズにとっては、とても大切な友人だったのに、既に彼はアズの中で好きと嫌いの瀬戸際に位置付けられてしまっている。
いや、嫌いとは少し違う。アズは彼が怖かった。
誰かが自分のせいで喧嘩をする。
その度にアズは暗くなって行き、どうしてか彼はそんな彼女の姿を一向に気づかない。
そうしてまたアズは塞ぎこんで行く。
元々少ない口数が更に減れば誰だって心配になる。
そうしてまた、誰かが彼と喧嘩をして――。
彼が絡まなければいつも通りの日常だった。彼が絡んだ瞬間、そんな日常はあっという間に消えてしまい息苦しさだけが残る。
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