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ミナミとアズは、自宅通いのミナミの最寄り駅で下車した。
ミナミはご機嫌らしく、さくさくと歩いていく。置いていかれないようにアズは必死で追いかけた。
改札を出るとミナミはきょろきょろと周りを見回した。暫くして誰かを見つけて軽く手を上げると、目標の人物たちの方へ歩き出した。
アズは内心気が気ではなかった。彼女は筋金入りの人見知りである。
ミナミは待ち人に声を掛けた。ミナミの声に混じって聴こえる和気藹々とした数人の見知らぬ声はどこかで聞いた声のような気がした。
俯いてなければ、誰が待っていたのかすぐにわかったかもしれない。がちがちに緊張しているアズは俯いて顔を上げられないでいる。
と同時に、後方からも声が聞こえた。
「ごめん! 遅くなった~! ってかミナミ、同じ学校なんだから俺を拾ってけっての」
陽気なその声は、聴き慣れないものなのに聴いたことのあるような声で、どうしてかアズは知っている人のような気がした。
わけがわからなくて少し泣きたい気分だった。居心地悪いことこの上ない。わけがわからないけれどなにかが引っかかる。そこがまた居心地の悪さを誘う。
なんだろう。どうしてだろう。そう考えているうちに自然と顔が上がった。
ミナミの友達たちが誰かわかりかけた瞬間、ぽんと撫でるようにアズの頭は叩かれた。彼女が見上げた先は随分上で、それがさっきの声の持ち主である。彼は嬉しそうにはにかんだ。
途端、アズがすっとんきょんな声を上げた。
ミナミがにやりと意地の悪い笑みを浮かべて、勝ち誇ったような顔をしている。
途端にぽろりとアズの目から涙が零れた。
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