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静かな部屋の中、黙々と仕事を行う彼女に私は随分と思い切りの良い質問をしてみた。
「ねえ、私と付き合わない?」
彼女は顔を上げ、珍しく困惑の表情を見せた。
「それは、恋人同士にならないか、という質問と捉えて構いませんか」
「うん、そういうこと」
どう思う?と尋ねると、彼女は淡々と首を振った。
「随分とおかしな考えに思えます」
「そうかな?」
「はい、アンドロイドは恋をしません」
全く随分昔の映画に出てくるようにアンドロイドらしい形式通りの答えである。
「そんな考え、古臭いよ。昔の小説とか漫画とか読んでみなよ」
「本と現実を混同することは危険です」
「そうかもしれないけど。現実にもお付き合いしてる人たちはいるじゃない」
結婚だって認められている。無機物と恋愛なんて、と言われていたのは遠い遠い過去のことだ。
「あれは人間が望んでるから、応えているだけでしょう」
「私が望んでも駄目なの?」
「私達の間にそういう問いかけは愚問だと思いませんか?」
冷笑の表情を浮かべる彼女も珍しい。いつも微笑がデフォルトなのだ。
私にだけ、と思えば嬉しくもなるだろう。
「ねえ、どうしても?私、あなたが好きなのよ」
「アンドロイドですよ」
「そんなの関係なく好きなのよ」
彼女は人間のため息に似た仕草を見せた。
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