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「ただの友だちにこんなメール送る?」
動揺した祥子は、一郎と直美とのメール履歴をたどる。
たわいない日常の様子をそれぞれに知らせているだけだが、週に2、3回というメールの頻度と親しげな言葉づかいに、単なる友人以上の何かを感じた。
「そう言えば、ここのところ家を空けることが多くなったような……」
先月の2泊3日の出張は、本当に仕事だったのだろうか。先日の飲み会の相手は、本当に会社の同僚だったのだろうか――。そんな疑いが頭をもたげてくる。
「このメール、いったい、いつから? 未練があるの? 直接会ってるの?」
祥子は問いただした。
「盆休みに大学の同期会があったの、知ってるだろ? その時にアドレスを交換した。向こうも結婚して、子どももいるんだ。やましいことは何もしていない。言い回しがフランクになるのは、互いに学生時代の気分になるからだ。お前が嫌なら、もう彼女とはメールしない」
一郎はそう答えたが、祥子には信じられなかった。一郎はどちらかというと気の短い方だが、なぜか勝手にメールを見たことを怒らず、代わりに翌日からトイレにも携帯を持ち込み、風呂に入る時には携帯をどこかへ隠すようになった。
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