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 丸岡がついと新田の横へ立った。 「わたくしのサポートが欲しいと旦那様へお願いいたしまして、新田を使用人として雇うことになりました。主におぼっちゃま……今春様の身の回りのお世話やお迎え等をさせたいと考えています。わたくしも年寄りですので、今春様のご予定全てを把握できませんので……」  コホンと小さく咳払いして最後は妙に回りくどい。俺は丸岡の嫌味に気づかないふりして小さく頷いた。 「……そう。わかったよ。自分のことは自分でやれるから、大丈夫だと思うけど。よろしくね」 「はい! なんでもお気軽に、申し付け下さい」  新田が丁寧に頭を下げるのを見届け、これで終わりと二階へ上がろうとした。 「あ、今春様。お食事はどのようになさいますか?」 「要らない」  背後からの声に振り返らず自室へ引きこもる。 「ふー」  ネクタイを解き、スーツを脱ぎ捨てシャワーを浴びる。  今日はいやに暑かった。足もクタクタ。睡眠不足だから余計にキツかった。  汗を流しサッパリして、洗面台でヒゲを剃る。自分でも嫌になるくらい目が死んでると思う。元々三白眼気味で目つきは悪い方だ。決して醜い顔ではないが、いかにもホストのような顔立ちの男が社長の息子なんて周りの人間も不愉快に違いない。俺だったら不安を覚える。実際、会社で俺に説教する人間は皆無。新人の顔色を伺いながら仕事を教えるのは疲れるだろうに。 「はぁ」  鬱陶しい気分を振り払い、全裸でベッドにダイブする。真新しいシーツのサラサラした感触が気持ちいい。俺はそのまま眠りについた。
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