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目覚めたのは深夜の十二時前だった。
四時間も眠ってしまった。スッキリしてるはずだ。
ウォークインクローゼットを開き、赤色のボクサーパンツを履く。
赤はいい。テンションが上がってくる。
通勤用の地味なものではなく、パーティースーツに着替え、携帯と財布を上着の内ポケットへ入れ部屋から出た。
そういえば新田って住み込みなのか? ……ああ、住み込みなんだろうな。丸岡の代わりなんだから。
シンと静まり返った通路を歩き階下へ降り、大理石で出来た玄関ロビーで音が立たないように外へ出る。大通りまで歩くのも億劫で、タクシーを呼んだ。
庭を三分ほど歩き、正門へ到着。
人間用のドアをキーで開ける。静まり返った夜の空気は澄んでいて気持ちがいい。空には控え目な星が瞬いていた。しょぼい光を灯す街灯を縫うようにヘッドライトが近づいてくる。冷たい空気を体内へ取り込み、俺はやってきたタクシーで街へ繰り出した。
金曜日の夜。屋敷の周りとは打って変わって賑やかな繁華街に気分も高揚していく。
そう。これが俺。いいとこのおぼっちゃんで、金持ちで、スマート。ガツガツとナンパに精を出さなくても、常夜灯に集まる蛾のように女が寄ってくる。
いつも行くクラブは大層盛り上がっていた。顔見知りに挨拶しながらカウンターへ座る。
「イマハル君! やっときたー!」
リスみたいな雰囲気の女の子がちょこちょこと近寄ってきた。今日も見事な胸の谷間を惜しげもなく晒している。何回かここで一緒に酒を飲んだことがあるが、名前は覚えてない。
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