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「えっと、誰だっけ?」
「えーー! もう!」
女の子はプウと頬を膨らませ、腕を軽く叩いた。
「静香! 覚えてるくせにぃ~!」
「ああ、静香ちゃんね。ごめんごめん」
そうだった。静香。名前と本人にギャップあり過ぎて毎回笑えるんだよな。
静香は横へ座ると、軟体動物のようにしなだれかかってきた。
「会いたかったぁ~。今日は遅かったのね」
「仕事が忙しくてね」
「こんな遅くまで大変だね。今春くんてどんなお仕事してるの?」
「ナイショ」
「も~。けち~」
「ケチかな?」
聞き返すと静香はなぜか急に「ううん」と首を振った。俺の腕に両手を回し、胸の谷間に挟む勢いでグイグイ押し付けてくる。
「いつも奢ってもらってるし……ケチじゃないのは分かってる」
神妙な顔で言う。
「奢るのは当然じゃん。男だし」
「うふふ。イマハル君のそういうとこ好き」
一時間ほどそこでイチャイチャしてホテルへ誘った。
静香は目を丸くして「ホント?」と確認する。おかしな話だ。「冗談でなんて誘わないよ」と応えると、はにかんだ表情で「行く」と頷いた。
俺がいつも利用するホテルはラブホではない。普通のホテルだ。普通のホテルのスイート。出入りも自由だし、どの女も異常に喜ぶから。案の定、静香も感激して目をキラキラさせる。
「好きだよ」
「私も、大好き」
耳心地のいい言葉を囁きながら、そこで二回戦ほどして爆睡。
起きたのは朝の七時だった。
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