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「悪い。仕事行く。チェックアウトは十時だからね」 「ん~……」  酒の飲みすぎだろう。半分寝ぼけた裸の女はそのまま置いてホテルを出た。  はぁ。ねみい。帰ったらもう一眠りしよう。  大きなスライディングドアを潜り、表通りに出てギョッとした。目の前に新田がいる。一張羅(いっちょうら)でもあるまいに昨日着てたスーツ姿のままだ。 「おはようございます。今春様。……お迎えに上がりました」  ボソボソと半分寝てるんじゃないかと思うおっとりした口調。  ポカンと見ていると、新田は眼鏡の内側に手を入れ、目頭を数回押し、掛けてる眼鏡の位置を正した。しかし、その目は未だしょぼしょぼとしてうまく開いてないし、少し充血してる。 「おまえ、なんでここに?」  新田はズボンのポケットからごそごそと携帯を取り出した。 「GPSです。昨晩は今春様が気を遣っておられたので、でしゃばるのを控えました」  部屋を出たのがバレてる! しかも俺の後を追って、朝まで車で待機してたってこと? 「新田……だったよね。俺のお世話係に任命されたからって、そこまでしなくていいんだよ。勤務時間内だけテキトーにやってくれれば」  内心の苛立ちを抑えて微笑みを作る。眠そうな新田にちょっと同情する素振りさえ見せた。  なぜ二十五にもなってお目付け役なんているんだ。丸岡の眠っている時間帯なら小言を言われないで済むと思ったのに。
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