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第貳譚
第貳譚
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俺は、コートのポケットから煙草の箱を取り出し一本咥える。火を点ける物を探し、鞄の中を漁っていると指先に冷たい真鍮の感触がした。
掴んで取り出すと、あいつの形見であるジッポが顔を出す。
「旬……」
今は亡き従兄弟の名を呟きながら、今日までの一ヵ月を思い返した。
こんなにも一気に身近で人が死ぬなんて事、この平和な国ではとても珍しい。
それも、たった一冊の黒いノートの所為で。
「俺は……これから、どうしたら良いんだ ? 」
もう正直、心も身体も限界だ。楽になりたい。……でも、託された思いを無駄には出来ない。
「…………なぁ、教えてくれ……
俺は、どうしたら良いんだ ? ……旬」
固く握りしめたジッポを見詰め独り語ちる。
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