第貳譚

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【翔へ  お前がこの手紙を読んでる時、俺は既にこの世に居ないだろう。  先に謝らせてくれ、本当にすまない。  俺はある日、とある怪談を耳にした。お前も知ってるかもしれない【呪いの日記帳】って話だ。  元々心霊の類は一切信じていなかった俺は興味本位で調べて偶然に【呪いの日記帳】を手に入れてしまった。  最初は、信じてなんかいなかったさ。でも、視ちまった。  両目を抉られ血の涙を流す男の幽霊を、手紙と一緒に入れた写真に写ってる男がそうだ。  夢か幻だと思おうとしたが駄目だった。それから毎晩枕元に立たれて、俺は必死に【呪いの日記帳】について調べたよ。  でも、手掛かりは何一つ掴めなかった。  諦めかけた時、俺はある人の助言で【呪いの日記帳】を手放す事にした。  …………だが、無駄だったよ。【呪いの日記帳】は俺の手元に帰って来た。  そして、あの幽霊の男が言うんだ。「読め」って……悪いが内容は忘れた。  でも、読んだんだ。最後まで、……今日で七日目だよ。  …………お前には未だ紹介してなかったけどさ、俺な彼女が出来たんだ。凄く良い子でさ……今朝から行方不明なんだ。  俺のせいだ。俺が【呪いの日記帳】を読んだから……  頼む、部屋の屋根裏に隠してある【呪いの日記帳】を俺の代わりに始末してくれ。  こんな事と、頼めるのお前だけなんだ。一応書いておくが、何があっても絶対読むなよ。  最後の最後に、こんな厄介ごと頼んでごめんな。翔。  じゃ、さようなら】 「…………なんだよ、これ」  そこに書かれた内容は、とても信じられるモノでは無く……そして、二枚目の紙には【呪いの日記帳】について詳しい事が書かれていた。 【〈【呪いの日記帳】について〉  俺が調べてわかっている事を書き記しておく。  一 【呪いの日記帳】を読んでしまうと、その日から七日後に愛する人が行方不明になる。そして、十三日目には読んだ本人も死ぬ。  二 【呪いの日記帳】は、捨てても戻ってくるし埋めても燃やしても意味がない。  三 【呪いの日記帳】を読み、死んだ者は次の誰かが日記帳の中身を読むまで日記帳の呪いに取り込まれ成仏できない。だから、成仏する為に次の誰かに日記帳を読ませようとしてくる】 「……」  俺の記憶に残っている【橘 旬】と言う男は、怪談の類などは決して信じない奴だった。  現実主義者で、テレビの怪談特集など見ても鼻で笑ってしまうタイプだ。そんな奴が、最期に残した手紙の内容がまさかこんなものだなんて誰が想像出てただろう。 「……」 『…翔』 「 ! ……旬 ? 」  聞き覚えのある声に振り返ったが、そこには誰も居なかった。 「……」  不思議に思ったが、机に置いた便箋に視線を戻す。それから、写真へと視線を移した。  どうしたものかと一瞬悩んだが、昔俺が困っている時に旬は訳も聞かず助けてくれた事を思い出す。理屈っぽいとこもあり、誤解される事も多い奴だったが……俺にとっては大事な従兄弟だった。  その旬が、最期に残した手紙。 【「翔、【呪いの日記帳】を始末してくれ。」】  …………最期の頼み。 「……解ったよ。旬」  便箋を封筒に仕舞うと俺は、旬の実家へと向かった。
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