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ある日、「庄の国」にある噂が流れた。
山の向こうに、この地へ我々よりも「後から来たもの」がいるらしいと。異世界の民は、好戦的で恐ろしいと何代も前の先祖からの言い伝えがある。民は、彼らの存在が、いつか我々に災いを呼び起こすのではないかと怯えた。
ある日、「後から来たもの」の国から貢物が届き、「庄の国」に従うと拝謁した。首長は大いに喜び、平和の誓いを交わして、彼らをもてなした。
しかし、「後から来たもの」の国は、心も生活も貧しかった。自分のないものは、すべて他所から奪えばよいとの考えを持っていた。そのやましい心を隠して、使者を送り込みながら、国の内情を探った。ついに、「庄の国」には武器がないことを知った。
国の最大の儀式である春祭りの日に、「後から来たもの」は、「庄の国」に攻め込んだ。不意を突かれた庄の民は、あくまで武力ではなく、話し合いで解決しようとした。ただ、交渉はうまくいくはずもなく、庄の民は戦い方も分からず逃げ惑うだけだった。『後から来たもの』は、すべての財産、女を奪って、「庄の国」を滅ぼした。
『後から来たもの』の国は、「庄の国」が長い時間をかけて築き上げたものを基盤に巨大な国家を作った。文字が発達し、民族の正統性を誇示するために、この国の正史を作った。
この戦いを、国家誕生の聖戦として、後世に語り継いだ。国造りの章ではこのように書かれている。
かつてこの国には、「庄の民」という野蛮で残虐な悪魔のような先住民がいた。我が偉大な王は、この野蛮な先住民を成敗し、苦しむ民を解放した。
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