序章 未知の世界へようこそ

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 自分は関係ないとは思わない方がよい。血みどろのドラマは、君のとなりに転がっているのだから。君にも隠し事の一つや二つはあるだろう。 「この世に生きるみなさん! 覚悟はよろしいか? 」 「自分が何者かを知る覚悟は? 」 「心の片隅に隠しているものをさらけ出す覚悟は? 」  人類は誰もが、生を受けた瞬間から遺伝子に縛られる。遺伝子という設計図に導かれ、その人の能力、性格、本質が決められる。そのレールから降りること、逃げることは決して許されない。  遺伝子は時の流れをも逆流させる。私たちがこれまで語り継いできた歴史が、権力者達によって都合の良いように嘘で塗り固めたものだったことを曝け出すかもしれない。また、自分の祖先が残虐な一族であったことを知り、自己嫌悪に陥るかもしれない。  人は、見てはいけないもの、知ってはいけないことを、自らの力で封印を解こうとしているのだ。せっかく、人間には、都合の悪いことは忘れる能力、寿命があるにもかかわらず。  そのようなことをしてしまったら、これまで築き上げた信頼を失い、周りの人を疑いはじめ、差別やいじめ、大混乱が起きるだろう。  我ながら、この実験が面白くなってきた。この世の中は偽善の塊だ。すべてを曝け出せばよい。私をコケにした愚か者たちへの復讐だ。  それでは、残酷な時代のはじまりはじまり。
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