2話 審判

3/4

31人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
 恥ずかしながら、うちの財布は妻が全て握っているため、バレない金額にしないと後々が怖い……  その中で、ランキングは下位だが、ある遺伝子検査会社に行き着いた。 《期間限定》 「業界最安値で、最高の遺伝子検査を提供します。 ミトコンドリア遺伝子、Y染色体で祖先のルーツをどこよりも詳しく調査します!!」  この会社のホームページをみると、遺伝子検査を利用して、祖先探しがメインの作りになっている。アフリカで誕生して、どのように自分の遺伝子が日本に渡ってきたのかを、アニメーションで体験できるというものだった。  私の本来の目的は遺伝子からの体質、病的リスクを知りたいのであって、その会社のコンセプトは多少ずれているところがあったが、調査対象は200項目もあって、十分だった。  なによりも、同業他社が大体30,000円くらいの価格体系なのに、この会社は、キャンペーン中の期間限定ということで5,000円という事が魅力的だった。     これなら、クレジットをきっても、妻には飲み会だったとかでごまかせると確信した。  運営会社「株式会社w社」を調べると、去年の夏に設立されたスタートアップ企業であり、資本金は20億と記載されている。役員にはいかにもという外国人の名前が連なっており、外資系なのだろうか。この遺伝子検査サービスは、最近開始したばかりのようだ。  この会社は、ユーザー数をとにかく集めて知名度をあげることが目的なのだろうが、他社に比べるとこんなにも安価で採算がとれるのだろうかと疑問に思った。ま、遺伝子情報を集めてからのストック商売なんだろうと、会社での肩書きである新規開発部長の本能が出てきた。  真っ暗闇の中で息子が、突然泣いた。  怖い夢でも見たのだろうか。背中をさすりながら様子をみると、ふたたび、深い眠りに落ちていった。少し前まで、妻のお腹を内側から蹴っていた子が、もうこんなに大きくなったと感心する。血を受け継いだ我が子はどんな大人になるのだろうと思った。少なくとも、妻に尻にひかれたり、ネチネチ叱られて欲しくはないなと頭を撫でた。  再び、布団に入ってから、ホームページ内の個人情報、携帯のアドレスを登録した。慣れてない作業に、なかなか手間がかかったが、最後の注文ボタンまでたどり着き、ほっとした。  
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加