Yの遺伝子

序章 未知の世界へようこそ

　
　無知な皆さんに、今日はいい事を教えてあげよう。

　我々、人類の性決定は、細胞の核にある性染色体の組み合わせで決まるのを知っているだろうか。

　性染色体はX染色体とY染色体の2種類あり、XXの組み合わせをもつと女性、XYだと男性になる、といった具合に性別が決定する。

　Y染色体は男性だけが持つ性染色体なので、父親から息子にしか受け継がれない。よって、Y染色体の遺伝子を調べれば、父方の祖先をさかのぼることができる。王族だろうが乞食だろうが、身分の貴賎があったとしても、男系は万世一系なのだ。

　そうだなあ。。仮に「Ｙの遺伝子」とでも呼ぼうかな。

　ちなみに、母方の祖先をさかのぼる方法として、ミトコンドリアDNAを調べる方法がある。まぁ、ここでは時間がないので割愛しておくことにしよう。

　 現在の学説では、20万年前、アフリカで人類は誕生したとされる。人類は環境に合わせて、ＤＮＡの塩基の並びの変化、つまり、突然変異を繰り返してきた。単一の一塩基多型 変異をもつ共通祖先をもつような、よく似た集団をハプログループと呼ぶ。それが民族という概念に繋がる。

　有史以来、人類は不毛な争いを続けてきた。他民族を蹂躙して滅亡させたり、跡目争いを発端とした同一民族内の闘いは数え切れないほどあった。現代においても、この平和と呼ばれるこの国でも、後継者、遺産相続などで数々の生々しいドラマをみせる。

　ただ、毎日を無駄に生きている人間には到底気づいていないだろうが、遺伝子研究は、目覚ましい進歩を続けている。これまで、人類が目を背けてきたもの、曖昧にしてきたものを、遺伝子解析は残酷な形で表現するだろう。