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「クローン兵部隊」
軍部が出した結論はこうだった。倫理上到底許されることではないが、それだけでは大した軍事的脅威にはなり得ない。軍部が震えあがったのは、そのクローン兵の顔に見覚えがあったからである。そのことに気がついたのは、レオン・シュルツ特殊部隊司令官であった。D国は内戦が続くT国に介入し、軍事独裁を敷く大統領の政権転覆を狙って、現地における反政府組織のバックアップを行ってきた。そして、反政府組織が散々煮え湯を飲まされ続けてきた“ラクシャーサ”のコードネームで知られる男、その男とクローン兵の顔がそっくりだったのである。
“ラクシャーサ”はT国政府の反政府組織掃討部隊に所属する兵士であった。その戦績の中でも際立ったものは、反政府組織が人質として監禁していた国際ジャーナリストの奪還作戦であろう。警備が手薄だったこともあるが、“ラクシャーサ”とその部下数人は、人質が監禁されていた建物の周辺一帯を停電させると、警備にあたっていた兵士を次々と音も立てずに殺害し、人質を奪還した。そしてその後、付近にあった軍用車を奪って、人質と共に逃走したのである。無停電電源装置で作動していた監視カメラの映像には、その行動の一部始終が映っていた。“ラクシャーサ”とその部下は一発の銃弾も使わず、十数人の警備兵を殺害した。多くはナイフによるものだが、中には全く武器を使わずに素手で殺害された兵士もいたという。
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